先日の交換会(市場)に8冊ほどの文芸雑誌が出品された。入札の封筒に創刊号とある。その中に1冊異質なものが入っていた。「日本一社蚕影神社御神徳記」
 「日本一社」の文字に心がざわつく

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 落札し自店に持ち帰る。A5版35頁の小冊子、昭和4年刊。日本一社とは何なのだろう。
  日本一社蚕影神社。調べてみると、茨城県つくば市神郡に鎮座する全国に点在する蚕影神社(養蚕業の護神)の総本社であった。             

 欽明天皇御代(6世紀ごろ)、北天竺の大王に金色姫という娘がいた。母の先后が亡くなり、大王は後妻を迎えるがこの後后は金色姫を疎み、姫を獅子王という獣が巣食う師子吼山に捨てさせるが、獅子王は金色姫を襲うことなく宮殿に送り届ける。つぎに、鷲、鷹、熊などが巣食う辺境の鷹群山に捨てさせるが、鷹狩のために派遣された宮殿関係者に発見される。つぎに、海眼山という不毛の孤島に流させたが、漂着した漁師に保護される。ついには、清涼殿の庭に金色姫を埋めさせるが地中から光が差したので、王が掘らせたところ、金色姫がやつれた姿で救い出された。

姫の行く末を案じた王は、しかたなく桑で作った靭(うつぼ)船に姫を乗せ、海に流した。この船は何とインドから常陸国の豊浦湊に漂着するのだった。


 豊浦湊に住む漁師夫婦が金色姫を救い面倒を見るが、やがて姫は空しくこの世を去ってしまう。ある夜、夫婦の夢枕に姫が立ったので、唐櫃を開いたところ、亡骸はなく無数の虫が動いていた。金色姫が桑木の船で流れてきたことから、桑の葉を与えたところ、虫はみごとに成長する。
これが日本における養蚕の始まりという。

朝にこの一冊に出会い、夕べには我が心は古代インドに飛んで行ってしまった。幸せな幼い日の金色姫、真っ暗な土の下の金色姫、異国の地で命と引き換えに蚕へと身替わっつた金色姫。

翌日は現世、
 「日本の古本屋」と「Amazon」で出品検索をかけると、出品が無い。出品された形跡も無い。
 蚕影神社単独の研究書も見当たらない。参考文献として「筑波郡案内記」などがあるばかりである。

日本一社、日本一冊。さてさて、古本屋としてはいくらに値付するものかは心がざわつく
来週も交換会(市場)に行くぞ
 
                                                         2015/07/08           藤沢湘南堂書店