神奈川古書組合の交換会入札市は、毎週月曜日に開催されている。

 昨日の入札市は惨たんたる結果であった。これはと思うものが何ひとつ落札できなかったのだ。
 入札の最大の敵は入札する同業者ではない。「Amazon」と「日本の古本屋」と貧乏だ。ネット通販サイトの最低価格が入札の足を引っ張り、貧乏神が強気と気力と胆力の闘争心をそぎ落とすのだ。

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 入札会場にこの一口が出品されていた。新聞社の無料配布の複製浮世絵、富士山の写真集、宇宙飛行士たちのドキュメント写真集などの山。 
その中でひときわ目を引く黄色の背表紙の一冊がこれ。
  
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 この一冊が欲しいが為、ほかのものも、しかたなく値踏みしていく。 
 「これとこれを売って元か」「この一冊を抜いて、残りを市場に売り戻していくらのもどりか」「この一冊があれば、売り場に明かりがさすな」などの思いが瞬時に頭を駆け巡る 。


 平成7年刊 「戦中戦後 紙芝居集成」、アサヒグラフ別冊、A4版変形、338ページ ・・・子供たちの娯楽そして社交場

 電信柱の影から、子供たちの背で見えぬ紙芝居を見ていたことがよみがえる。この一冊で、当時見たことのないものまでが、今手に入る。 
町内に響き渡る拍子木の音と呼び込みの声、駄菓子に群がる子供たちの笑顔の背中、にわかにヒーローと化すおじさんの一人芝居と見えぬ絵・・・

 店頭の紙芝居たちの横にそっとこの一冊を置く。
 いつまでも売れない紙芝居たち。売れなくても幸せを運んでくれる一冊。
 いつも申し訳なさそうな紙芝居たちがこころなしか喜んでいるように映る。
  
 付記
 いっしょに紛れ込んでいた富士山の写真集が、献呈ではあるが墨筆、落款入りの署名本であった。やった、これで元だ。すっかり売れた気になった一瞬であった。

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                                                                                                          H27/07/14             藤沢湘南堂書店